洗濯物/為平 澪
 

靴下に弄ばれ、ハンカチを落とし
制服に手をやき、
ワイシャツに愛想をつかしながらも
その手は再び、雨に打たれて項垂れる彼らを
陽のもとに連れ出そうと
アイロンで温めて人様の前まで送り出す

干せなくなった女は簡単に世間に干され
出ていく、という掟が一つ、
縁の下に結ばれている
鋏で切られる日まで 
ひたすら腕を、手を、指を、動かし
やがて沈む夕日を瞳にしまう

軒の下には
ひるがえる家族が並んでいる
隣家では若い女がいつも白い狼煙を蒸かして
明日も晴れての旗揚げを繰り返す

戻る   Point(3)