地鳴き/山人
 
きなかったが、健全な鼓動を刻んでいるのだろうと思った。
 午後三時頃から雷注意報が発令されていたので、ここで引き返しても良いと思ったが、出来れば前岳分岐まで刈り倒したかった。徐々に疲労からか刃を石に叩きつけてしまうケースが多くなり、まるで切れ味が悪くなってきた。休んで刃を研ぐことも考えたが、あともう少しと思い、切れない刃のまま作業を進めた。
 全作業時間、六時間半で前岳分岐に着いた。すでに弁当は食べ終えていたので、カシューナッツと水で乾杯した。 
 刃はガタガタだった。ずいぶん時間を掛け研磨した。刈り払い機の熱が冷めると事業用四号袋のゴミ袋にエンジン部分を入れ藪に仕舞った。 
 明日、早朝、ふたたびこの場所まで歩いて登ってこなければならない。そしてまた作業をする。私にとって当たり前のことが今年はとても不安でならない。

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