ばばちゃん/望月 ゆき
ばばちゃんが死んだ日のことは
よくおぼえていない
朝、いつものように食卓についたわたしに
ばばちゃんは何か話しかけた
たあいもないことだった
と思う
しかし あきらかにその言葉は
不自然に数箇所どもっていた
それから
ばばちゃんの右側が動かなくなるまで
あまり時間はかからなかった
わたしが小学校の真ん中頃のことだ
ばばちゃんはおかあさんを嫌っていた
わたしの悪いところを叱るときはいつも
おかあさんにそっくりだ、と罵った
それでも
おとうさん似のわたしを
おかあさん似の妹よりも
ずっとかわいがって自慢した
それは少し嬉しかったけれど
わたしはお
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