ある夏の夜に、砂浜で花火をした。/秋葉竹
 

そらの光が、しろいのは
せかいの悲しみが、混ざっているから。

夜になれば、小雨が降り
ほおりだされた悲しみが、忘れられている。

陸にうちあげられるつめたい海水よ、
あらそいの残骸を、いつまでも、伝えておくれ。

砂浜をゆく、茶色いおさない蛇が
海から生まれ出て、迷わず街へ向かってゆくのを、

斜めに傾いた、砂に埋まった人形の、
青いガラスの瞳が、みつめている。

瞳から雨水を、流しながら。そのとき、せかいに、
しあわせが消えたとも、

神さまに祈らなくても、
しあわせになれるようになった、とも、聴く。

あらそいを好きなひとなど、
いなければいい、夏に、

いつまでまてば、
あらそいの悲しみは、癒えるのだろう?


花火した、夏の夜、そんな心配をした。
いつだって、線香花火は最後にするんだって知ってる。









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