あの坂をのぼれば/七尾きよし
 
小学校の教科書だったろうか
あの坂をのぼれば
海が見える
あの坂をのぼれば
海が見える
と繰り返す文章が
40年近く経った今も
あのときの少年たちの声とともに
ここに聞こえている
あの坂をのぼれば
海が見える
あの坂をのぼれば
次は下り坂
海が見えなくなるだろう
その次の坂をのぼれば
再び海は見えるだろうか
それはのぼるまでわからない
私は海を見るために
坂をのぼるのだろうか
海を見ることが人生の
目的なのだろうか
坂をのぼることが人生の
意味なのだろうか
坂をくだっていく私は
何者なのだろう
あの坂をのぼれば
海が見える
あの坂をのぼれば
海が見える
あの人も去り
またあの人もこの世を去った
のぼり坂と
くだり坂とを
くりかえす中で
何度海を見たのだろう
たどりつくかどうか
それはどちらでもよくて
あなたがのぼった坂を
あなたたちがくだった道を
あの坂をのぼれば
海が見える
あの坂をのぼれば
海が見える
そんな歌を歌いながら

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