フリースタイル/チャオ
写真展の周囲に張り巡らされた写真。不器用な感覚が、アンバランスな現実と符合する。所詮は、不均一の集合体なのだ。
はっとする。ここは写真会場だ。だれもカメラをつかえはしない・・・・
僕は写真の中の一部になって、後ろの若者が苦笑しているのに気がつく。ソファーの前に飾られた大きな写真。若者は僕の後ろから、その写真を見ていた。言わなくてもわかっている。僕もその写真の一部なんだろう?写真家が計画した装飾品の一部なんだろう?今度は君がなるばんだよ。
僕はソファーから立ち上がる。
写真と写真に吸い込まれるような感覚がある。若者はソファーに座る。僕はその場を後にした。
忘れないように傷つけた、指先の約束みたいな写真だ。
何の変哲もないのに、写真家は僕の後ろに常に立っている圧迫感を覚える。痛いほどの約束を見つけ出したような、そんな気分になった。
僕は写真展を後にして、晴れた冬の空気にあくびした。
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