それは広がり続け、そして深くなり続ける、そして二度と狭まることはない/ホロウ・シカエルボク
根源的な飢餓が髄液を澱ませてでもいるように、奇妙な焦燥がゴキブリみたいに心臓を徘徊していた、何度瞬きをしても視界は良好というレベルには至らなかったし、チカチカと水晶体のすぐ側で忌々しい明滅が繰り返された、その度に検死医に瞳孔の具合をチェックされているみたいな気分になった、ペットボトルの水を幾度かに分けて飲み干したけれど、呼吸とともにすべてが蒸発してしまったように感じられた、右手の人差し指と親指の爪の先端をぶつけて音を立ててみた、有意義な行為ではなかったが、だから気晴らしにはなった、左手はずっとやる気を失くしていた、せめてしっかりと呼吸をするべきだと思い、無駄な力を抜いて深呼吸を繰り返してみた、
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