邯鄲(かんたん)の枕の側で/ゆるこ
吹き上げられた蜻蛉の、
羽に浮かぶ無数の生命線をなぞる
うつくしい、夜の前の空は脈々と
埃のように舞わせ 焦がしてゆく
背中に彫った 哀しみの中に
心臓をひとつ、置いてきました
誰にも見つからないように
心のかけらも 添えていきます
太陽に焼き尽くされる前に、
言葉で影を落とそう
朦朧とする春眠の空気の中で
足を釘で刺して 立とう
そうして、
わたしの夜と朝が完成して、
紙芝居をめくるように
丁寧ないのちが 瞬いていく
夜明けの信号機の前に
静脈を置いていきます
美しいと思った その
ささやかな心も、置いて行きます
走馬灯の速度に追いつけないほど
目まぐるしい生をありがとう
吐息は空へと還り、
わたしはまた 目覚めてゆく
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