夜の襞/塔野夏子
 
部屋の片隅に
壊れてしまった時がいくつか
転がっている
それらは この夜に
透明な襞を寄せてゆく

やがて その襞は
包んでゆく
君の記憶を あるいは予感を

あるいは 記憶と予感とが
交接して生まれる何かを

それは透明な襞に包まれて
やわらかく息づいている

その息づかいを感じるほどに
この胸は薔薇へと変わってゆく
夜が果てるまで咲きつづけてゆく
幾輪もの薔薇になる


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