母親の変態についての手記/ゆるこ
白いカーテンの揺れる部屋は
少し黴臭く、湿っぽい
レンタルベットの軋む音の中に
心臓だけになった母親は 小さく呼吸を繰り返していた
はじめて母親の大きな身体が剥がれたのは 小五の夏休みだった
当たり前を 繰り返す日々に
いつの間にか、亀裂が生じ、
そこから母親の肌がべろりと 剥がれてしまった
ファンデーションで塗りたくった肌は
こわばった筋肉と血液で汚れ、
医者たちは、母親がこれ以上小さくならないようにと
ワセリンと、薬と、ガーゼとを
工場の作業員のように、何度も修復していたけれど
内臓があふれ出てきたころには
すべてのことをあきらめていて
私はそれを
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