僕たちの行方/本木はじめ
ぼくたちを結ぶ機会を握ってる獣は未だ箱舟の中
辿り着く場所はどこだかわからないゴタゴタしてる神様の庭
迷い込む羊の群れのただなかできみとよく似たガラスを探す
抱きしめるガラスのようなきみの夢あきらか過ぎる修辞を殺す
もう僕は夢も希望も自転車も青臭いから豪雨を愛す
正しいこと正しくないことひとつひとつばらばらな矛盾を解きほぐす
屋上できみがつぶやく「悲しみ」に遥か彼方の彼方まで青
飛び降りる機械のような空だから涙のような世界が転ぶ
真夜中に爪を切るきみぼんやりと深爪みたいな恋にぼんやり
小枝ならポキポキ折ってゆきましょう数え切れない悲恋のために
挨拶をしないで通り過ぎてゆく見えない機会に今日も「おはよう」
変わるきみ変わらないぼく変わるぼく変わらないきみ交差する春
僕たちの行方を誰が知るでしょう無数の扉のひとつを開ける
戻る 編 削 Point(11)