思えば、出口なんてイデーをはっきりそれと認識したのは/ホロウ・シカエルボク
飴色のグラスみたいな陽だまりが廊下の奥に落ちていた、天井に埋め込まれた空調が立てる微かな稼働音は何故だか宇宙船を連想させた、俺は廊下に並べられたパイプ椅子に腰かけていた、それは五脚あったが座っているのは俺ひとりだった、淡いベージュの壁や、均等に並んだドアや、廊下の椅子や、神経症的な静寂の中にたったひとりでそうしていると、診察を待っている患者のような気持になった、けれど、どれだけ待っても誰かが呼びにやって来たり、近くのドアが開いてお入りなさいと言われることもなかった、そもそもどうしてここに腰を下ろしているのかまるで思い出せなかった、いや―思い出せないというよりも、それまでの生活から急に切り離され
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