虫篭窓の瞼/あらい
 
に溺れて何処までも羽搏きゃあいい。忘れてしまえばいい ように 夜はできているもんだ。
 朝になれば夢の一言で流される憐れな話を聞いたところで、すべて虚構でしかない。思い出すとすればそうさね、走馬灯に近いだろう。
 お前らはいずれ死ぬ。それだけは確か、
 死を闇を見得ぬものとして、畏怖として刻んでやろうな。
 魂の奥深くに根付いては花を咲かせるがいい。野ざらしの揺り籠を守る胡蝶、歪な香りに狂わされた者たちの唄が終われた柩の苑。?み込まれるがいい、闇に、とこしえのおそろしさを、この身から滲む境に触れたものとして、伝えるがいい、この法螺話を。

 歪んだ廃屋に住まう老婆は元は花売りをしていたという。摘み取られた花々の売れ残りは傷み此処に種を自生させる。首を刈り取られた花々は枯れてなお見せしめに壁に飾られている。そんな場所であったと創造できるが、然し縁あって此処に夢寐と老いて、番いと棲みついたはずであるが今はもう墓場の揺り籠となる。

 白百合は胡蝶の夢と騙り垣間見た黒揚羽は其処にそっと侍る時が来たのだろう。
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