感電のさなかには痛みなど感じていないものだ/ホロウ・シカエルボク
微量の電流がひっきりなしに身体中を駆け巡っているような違和感が続いて、痒くもないのに腕の同じところを掻きむしっていた、寝たり起きたりを繰り返した朦朧とした頭では現在時刻を確認することも容易ではない、この部屋には時計がない、携帯電話か腕時計を覗き込む以外にはそれを確認することは出来ない、そしていまはどちらを覗きたい気分でもなかった、放出されるべき熱が外気に触れることが出来ぬまま肉体の中で泡となっている、そんな感覚があった、本当の欲望はかたちを持たない、それをそれだと思わぬまま認識されることを望んでいる、いつかならなんとかなった、まだそのことがはっきりと判らなかった季節だったら―知り過ぎた、それは
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