カップ/山人
 
 
 どうやら私は死んでしまったようだ。
私は葬儀場の天井に実体の無い魂としてぼんやりと浮かんでいた。なぜ死んでしまったのか、よく思い出せない。体調不良になったような気もするし、何かの事故にあったような気もする。普通、それほど昔ではない過去のことなど忘れるはずはないのだが、まったく思い出せないのだ。
 一様に皆家族は泣いているようだが、泣いていないのも居る。まるですりガラスのようにぼんやりしているし、声もよく聞き取れない。
 線香のむせるような匂いと僧侶のお経だけが堂内に響いていた。
 ところで私はここに居るのか居ないのか?ふと実体を確認したい欲求に駆られた。眼球があるわけでもなく、つま
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