ショー・マスト・ゴー・オン(脚本がすでに失われていても)/ホロウ・シカエルボク
 

椅子に腰をおろしてきみが居なくなってからの話をした
きみに聞こえているのかどうかわからなかったけど
話したかったことはとにかく話した
それは二時間くらいはかかったと思う
それじゃあ、とぼくは立ち上がった
さようなら、と言ったけれど
やっぱりきみはぴくりとも動かなかった
ぼくが出て行くときに大きなおならをしただけだった

ぼくはそのまま駅に行って
いま住んでいる家に帰ることにした
ホテルには電話をして急用で帰ることになった、と説明した
金は払ってあったからそれでよかった
そのときの
妙にけたたましい車輪の音や
車体の軋みや
トンネルの中で感じた怖ろしい闇のことを
ぼくはしばらく忘れることはないだろう
かなしみと呼ぶにはあまりにも馬鹿らしかった
だからそれはコートの中でいつまでもざわついていたのだった

ぼくはもう生まれた街に帰ることはないだろう

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