こけむす/蒼木りん
 
がした
便利でなくても
不便と思わなかった
人の家の匂いは
通る風が運んできた
私を囲む
調べる
主が
いた

風の通り道がある
神様のいる場所がある

波打つ地形の窪みに町があり
川が横切る
高台には
杉林を背に
生まれた家がある

風が通る家だ
舌がジンとする井戸水があった
お墓でもないのに
文字の彫られた石が
あちこちにあった
柿の花がこぼれていた
オナガは
洗えば
青い鳥になるんだろうか

そこここに
神様がいた

ときどき帰っては
探すともなしに逢いに行く


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