歩く/
ミナト 螢
手首にだらんとした腕時計で
チクタクと急ぐ歩調を合わせる
優しさは道を譲ることなのに
カップルの間を割る癖がある
歩く
ただ悔しくて
うまく愛される方法を探しても
カラオケの音漏れに気を取られて
人混みにいるから孤独になる
歩く
透明な瞳が濁らなくなる
街角の匂いに先回りして
味のないパンの耳を
齧るように丁寧な改行で
歩く
ビルの谷間に沈む夕陽が
汗を掻いているみたいに見えた
足は痺れて上半身だけが
月の形を真似しようとする
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