ぽっかりと空いた穴みたいな時間/ホロウ・シカエルボク
緩い傾斜は右へ左へと度々方向を変えながらその頂点へと続いている、俺の脳裏ではマーチング・バンドの隊列が知らない曲を演奏しながら練り歩いていた、演奏はあまりにも楽譜通りで―大病院の会計で知らない誰かが名前を呼ばれているのを聞いているのと大差なかった、数年前にホームセンターで買ったスニーカーが悲鳴を上げている、安物は継目から壊れていくとしたものだ、覚えておくといいよ、これはどんなものにも当てはまることだから…歩き始めた朝には晴れていたのに、正午近くなって途端に空は真っ暗になった、夜になるタイミングを間違えたのかと思うくらいに、黒雲が立ちこめて、誰も居ない狭い道はたちまちホラー・ムービーのような様相
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