吟遊詩人の歌/ホロウ・シカエルボク
 
ろ向きな感情からじゃない
いつだってほんの少し、いまよりもほんの少し
脳味噌の風通しを良くしたいと思ってるだけさ
鴉が東の家の屋根でなにかを突いている
黒いだけで様々な印象を押し付けられた鳥だ
印象だけですべてを語ってしまうやつなんかそう珍しくもないさ
あいつの言葉を知っていればそう教えてやれるんだけどな
飲水が今夜は妙に澄んでいて落ち着かない
飲むと死んでしまいそうな気がする
星は
光点ではなく
こちらに突きつけられた無数の槍の先端なのではないかと
そんなふうに思えた夜が一度あった
両手を広げて
両の目を見開いて
夜明け前の白い闇が訪れるまで待っていたんだ
あの中のひとつが、あるいはすべてが
無慈悲に肉体を貫いてくれるのを
長い時間を掛けて水を飲みほす
妙に劇的な御終いを望んでしまううちは
ばたばたともがきながらまた歩き出してしまうだろう


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