プールの水は何色でも構わない/ホロウ・シカエルボク
 

粘ついた舌ですべてを容赦なくなめつくすような雨がようやく上がったあと、機銃掃射のような太陽の子らが跳躍を繰り返した、俺は脳味噌を安い匙で掻き回しては言葉を拾い、左官工のように投げつけては撫でつけた、問題なのは素材じゃない、どれだけ特出したモチーフがあっても、上手く使えなければなんの意味もない、どこかひとつ、大事なフレーズだけが浮き出てしまうようでは、他の部分は要らないということになってしまう、すべてを語ろうとしないことだ、たった一行や、数千の文字で、語れるものなどそんなにないことを理解するべきだ、それは必ず書ききれない、必ず取りこぼしがある、必ずなにかを忘れている、そこにこだわるべきではない、
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