蜘蛛は蜘蛛と戦う/竜門勇気
 

窓辺の席で高校の最後の年を過ごした
この記憶で誰かに伝えておきたいことなど無い
何も起きはしなかった
窓の外で歩き回る人たちを見ているだけだった

終業式が終わったあと、少しだけ教室に残っていた
友人と出かける一群がわずかにうごめいている
仲良くもないやつが言った
「カラオケにでも行かないか」
みんなはそうするのかもしれない
やつは3人ほどで連れ立って教室をあとにする
この部屋の中では何も育たなかった

男子生徒の中で卒業式の日までに進路が決まっていたのは一人
あとは明日からフリーターか無職だった
俺は無職になる
何も決まっていない憂鬱の影が太陽と逆に部屋を回る
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