春雨/ベンジャミン
 
暗雲の下で僕は震える

苦し紛れに
淋しいと呟いてみる
身体に蓄えていたぬくもりが
抜け出してゆく感覚を知っている

昨日咲き誇っていた桜は
今日にはだいぶ散ってしまったそうだ
春という季節に
ずいぶんと過大な期待を寄せてしまえば
それは寒暖の差よりも激しく
気分を上下させる

雨に濡れる花びらを思い浮かべてみた

枝を離れれば
どれほどの価値があろうと
忘れられたように地に伏すだけで
やがて跡形もなくなってしまう

窓の水滴が集まって落ちてゆく

頼りない肩を
自分の腕でくるんでもう一度
淋しいと
呟いてみる

自分の声が
雨音よりも騒がしいことに気づく

     
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