金属のリズムに違和感があるのはあたりまえ/ホロウ・シカエルボク
 

ポケットの中で小銭を弄ぶ癖をやめたのは微かに耳に届く金属音が命を削っている気がしたからで、それについては正しいとも間違いとも考えてはいない、ひとつひとつのポケットはずいぶんと軽くなった、小銭をあまり持ち歩くことがなくなったせいだ、それはひとつの財布に集約されて鞄の中で沈黙している、そんな些細な経験が教えてくれたことは、人の死なんてどんな入口からでも入り込んでくるということだ、あれは確かに細やかな死の予感だった、ある時まで周辺はそんな予感で満ちていた、だからたくさんの癖が失われ修正された、それについては正しいとも間違いとも考えていない、自分を神経質だと考えたことはない、むしろそんなふうに変化して
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