鬼蜘蛛と私(おにぐもとわたし)/こしごえ
それでもね ね ほ
ほおほおと近くの杉林で
ふくろう歌い始めて張りつめていた空気がしんなりする
今は黙礼をして今を通りすぎる
これらは私の住む世界のことなので
私にとっていつかのあなたは
お月さんのように遠く親しい
あなたが呼吸をしている未来に 何気ない今のことを忘れるだろう私の
覚えていることだけではなく
今をつくるのは さまざまな今よ
私のいない未来にも
この鬼蜘蛛の歌はそっと命に触れつつ軒下でほのかにゆれています。
命は原初から欠けている 故に、存在していることが ありがたい
感覚器官と共にある魂で気付くことができる命を
鬼蜘蛛は食べて糸にする
命は 命に支えられる命命を支える命魂という命
連なり
私と
命を見つめる
鬼蜘蛛
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