栞/丘白月
お昼休みにだけ
あなたを見つめてた
あなたの借りた本を
いつも次に借りる
あなたの名前の下に
私の名前を書く
ただそれだけで
胸を熱くしていた
転校すると聞いた日
最後の図書カードに
私は済のハンコを押して
そっと手作りの栞を渡す
僕の栞も貰ってと言った
いつも借りた本に
栞を挟んで返していたと
気づいて欲しくてと
私のイニシャルを
書いてくれた栞が幾つも
言葉の海に沈んだまま
長いあいだ今日を待っていた
遅いなんて思わない
知らなくて良かった
別れを飾る言葉は
本に挟んだままでいい
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