どこかの駅で誰かとすれ違うためだけに生まれてきた/ホロウ・シカエルボク
ふやにするような
そんな一画で
能動的な化石のように
いびつな窓を探して居たいのだ
ふたつ手前の国で手に入れた絵葉書を知り合いに送って
そいつの中の時差になり
そしてそれきり元いた場所のことは
記憶から抜け落ちてしまう
固定電話の呼び出し音が
けたたましく鳴り響くのは
決まってそこに誰もいない時なんだ
駅員が列車に乗り込むために
あれこれと忙しなく踊るのを見ながら
いつだって
ぼくではないものになりたかった
いずれ
ぼくになりうるかもしれないいきものは
薄汚れた無人駅の
浮遊霊になるかもしれない
その影を見つけた誰かは、そうさ
ホームの片隅で
もう使えない切符を拾うかもしれない
その時のために
書置きの文句だけは
きちんと
決めて出ておいでよね
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