どこかの駅で誰かとすれ違うためだけに生まれてきた/ホロウ・シカエルボク
どこかの駅で誰かとすれ違うためだけに生まれてきた
やあ、と言葉を交わし合うこともなく
親密な他人と認め合うような
静かな笑みを交わし合うこともなく
その目に
特有の孤独を共有することもなく
ただただ
景色のひとつとして
互いが
すれ違うだけの人生を
ホームで拾った切符の行き先は
もういまはない駅へ行くためのものだった
思えば
闇雲に決める行き先は
闇雲に塗り潰す時刻表は
ぼくは
ペーパーバックの隙間に
本当の理由を隠して
まだ見ぬ場所へ急ぐ
出来れば
二度と帰れない場所がいい
出来れば
誰にも出会えない場所がいい
過去と現在が
未来をあやふや
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