この街の壊れた玩具たち/ホロウ・シカエルボク
 
まう、壊されたのが自分ではないからだ、内に向かえない人間にはそのことがわからない―手のひらを差し出して雨の程度を確かめる、スェードのジャケットを着ていなければそんなに迷うことも無かっただろう、俺にだってひとつやふたつ、大事にしたいものはあるのさ…けれどその夜はもう帰りたかった、でも雨はまだやみそうもなかった、そんなタイトルの歌がはるか昔にあった、なんてバンドが歌っていたのか思い出せなかった、そうだ―俺は名案を思い付いた、このアパートメントの部屋を何軒か訪ねれば、捨て置かれた傘のひとつふたつ見つかるかもしれない、俺は奥へと進み、部屋のドアをひとつひとつ開けて確かめてみた、二階の一番手前の部屋のドアが
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