かげながら/丘白月
あの人はこの世界に
無駄な事は無いと言った
気づかないうちに
誰かのために生きていると
ミツバチが待つとも知らず
春になると花が咲き
鳥が飛んでる姿も見ずに
木は伸びて止まり木を与える
魚を知らなくても
湧き水は川を作りつづけ
海は行き場のない涙を
溜め込んで塩辛く波を打つ
波打ち際でそっと
両手で海をすくってみる
溢れる水が目頭に帰ってくる
ありがとうと交わした日の
あの人はこの世界に
いらない人はいないと言った
一度でも笑顔を与え
一度でもありがとうと言ったなら
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