平衡/カンチェルスキス
 
ウンの中年の男が
 テーブルを一つ挟んだ右側の席に
 座り
 フリーペーパーの求人誌を
 読みはじめた。




 おれはいつ自分はここから
 立ち上がるのだろうと
 考えていた。
 この座席をいつ立つのか
 ずっと考えていた。
 古くて新しい問題だった。
 もしかすると
 一生座ってるかもしれないとも
 思った。
 あるかないかのタイミングを逃して
 背骨も溶け頭蓋も溶け
 椅子の上でビニールの燃えカスになった
 自分を想像した。
 恐ろしくなった。
 長くいればいるほど
 立ち上がりどきが
 わからなくなっていった。
 混乱した。
 油のつ
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