白モクレン/風の化身
風が
春の歌を口ずさんでいる
穏やかな日
ぴんと背筋を伸ばした
素敵な貴婦人が
胸のポケットに
お洒落にしまい込んだ
白いハンカチを
ふわりと
私の前に落として行った
一瞬
「落としましたよ」と
声をかけようとして
すぐに止めた
古典的だけど
どきどきするほど
素敵な誘い方
「ねえ
よそ見しないで
私の方だけ見て」と
言いたげだね
楚々とした美人だけれど
やることは大胆
暖かさに誘われて
夢の中に迷い込むと
何時の間にか
心まで
白く染められてしまった
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