風のテラス(ちいさな死)/草野大悟2
 
 幅一センチ長さ二十センチほどの白い縦のラインが、床面から一メートルくらいの位置に、三センチずつの空間を空けて整然とならぶ、わたしの身長の二倍はゆうにこえるあたたかみのある厚い窓ガラスの内側に置かれた椅子に座って、光の粒子が硬質なガラスにあたって跳ねるようなビルエヴァンスのピアノにすべてをゆだねている。
 窓の外十メートルの所に、青空に立つ不動の物がある。
 ライトグレイ一色のそれは、どっしりと無口で、生い茂る草木の守り神のような佇まいをみせている。発せられる「気」はあたり一面を満たし、はるか昔に鬼籍に入ったなつかしい人たちをよびよせるのだ。
 見えないけれどみえる人たちは、ライトグレイのそ
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