桜の国/丘白月
 
やさしい春の結晶が
涙のように
ぽろぽろと散って
日差しを吸いながら
光って舞っている
あなたと歩いた日々は
あの空の向こうに
行ってしまったけど
この香りと温もりは
今も生きている
心配なんかしなくていいよ
僕は一人で春の中にいる
暖かいよ
手をつないでいるみたいだ
通り過ぎる人の幸せだって
結晶を頬につけて祈ってる
笑われてもいいんだ
鼻の頭にも結晶がくっつく
妖精のイタズラだね
僕はそっと取って
あなたと覗いた池に
浮かべてみる
底にはもう沈んだ結晶が
桜貝のように眠ってる
あなたの街も春だろうか
一緒に桜を楽しんでいるだろうか
ぼんやりと桜色の空を見上げて
桜の国へ入ってみる
安らぎの風が花びらを
どこまでも並べて導いてくれる
桜貝のイヤリングをした妖精が
こっちだよと飛んで行く


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