老いたアスファルトの波の上、無機質ながらんどうのクジラ/ホロウ・シカエルボク
世界は夜に満ち溢れ、天使は裏通りの潰れた酒場の店先で横になる、野良犬の鳴声には理由がない、欲望がないからこそうろうろと彷徨うのだ、ジャックダニエルの空瓶のカウベル、割れた舗装の上を這いずってる誰かの甘いドリーム、時間は壊れた文字盤とともに忘れられた、孤独なんてもう死に至るためのていのいいお題目だ、アルコールの花がそこら中で咲く、誰も他に暇を潰すための手立てを知らない、側溝の隅の汚れた硬貨みたいな存在があちらこちらに転がっている、自らが招いた悪夢のような日常を忘れるには脳味噌を麻痺させるしかない、それしかない、それしかない…いつだってやつらにはそれしかない、そう信じる気持ちがどんどん首を絞めていく、
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