ハナミズキの妖精/丘白月
 
花のひらく音が聞こえる
朝露に陽が落ちるような

庭に咲いた花を切る
母が好きだった花水木

母の真似をして
背の高い花瓶に
長い枝を挿してみた

学校にも持って行こうかな
友だちが待っていた
綺麗な花 何ていうの
花水木っていうの

ほんとなの
瑞希ちゃんと
同じ名前だね
うん
お母さんがね
決めてくれたんだよ

抱えた花から
あの日の景色が
こぼれては消えていく

妖精はひろいあつめる
瑞希の心をうめるために
どれだけの涙が
花水木の根に
流れたか知っているから


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