さまざまな世界で鴉が鳴いている/秋葉竹
「好きでした」一行の手紙が時を止め君が綺麗な声で泣く春
きみの乗るスクーターにはあの頃のセピアの記憶をまだ積んでいる
弓なりに背を反りかえし喘いだらダメだとわかっているワンルーム
縁むすび風鈴が鳴り北風が窓たたくなか君といた部屋
儲からない自由がこの手にのこるから窓からながれる雲みる夕刻
こんなにも君のマフラーあたたまる雪も舞い込む待合室でも
春待たずたちまちなくした片恋に桜舞い散れ表参道
さまざまなせかいで鴉が鳴いているぼくは窓からすべてをみている
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