春の女神/丘白月
唇に冬の終わりの匂いが揺れる
風を運んでくる妖精も
まいにち春の種を蒔く
畳の目一つづつ
陽が伸びてゆく
昼下がりの木陰も
少しづつ色が濃くなって
恋人の歩く道には
妖精が魔法をかけていく
枯れた草も片付けられ
新しい命を待つ
雪の精が冬の終わりをつげる
雪溶けのあとに福寿草の花が
太陽のように金色に輝く
妖精の手のひらに
春行きの切符が一枚生まれた
春の女神フローラの花園で
世界中の花の種が生まれて
妖精は月夜に飛んで行く
永遠の命を花に捧げるために
戻る 編 削 Point(0)