からっぽの世界/ホロウ・シカエルボク
海岸に流れ着いた死体は
名前のないまま葬られた
世間から隔離された
小さな漁師町の住民たちの優しさは
どちらかといえば退屈から来るもので
テツは一五歳
マチは一六歳
ラノは一四歳だった
テツは男で
マチとラノは女だった
それがこの町の
未来のすべてだった
あとは八人の大人と
十二人の年寄がいるだけだった
あらゆる金属が歴史と潮風によって赤黒く錆び
あらゆる家屋の骨格は激しい海風によって傾いでいた
テツとマチとラノには生まれたときから運命があった
三人でこの町の未来を担うという運命が
身体が出来始めるとすぐに
町の端っこの空家に移され
三人でとにかく子を作
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