変なひと/石川
 
たいていの朝やとんでもない夜中に変なひとはやってくる。
律儀に戸を叩いてくるのだが、むろん叩く必要などない。
彼らは壁を通り抜けるし、それを生業としてる。

今日もなの、とわたしがたずねるとこっくりと頷く。
わたしも暇なのでついつい相手をしてしまう。
たいていは卵スープやあたたかい紅茶を飲んで、数分後には去ってゆく。
変なひとは黒い帽子をかぶっていたり異様に背が高かったり
ときどき仮面をかぶったり女装していたりする。
名前はよくわからないが、南東の玄関わきから進入し北へ抜けていく。
ここは壁がすくないから通り抜けやすいとわらう。

変なひとはあたたかい飲み物が好きだ。

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