水彩の日々に/ミナト 螢
 
君に会う前は知らなかった
淡いパステルが重なる場所で
透ける心に手を伸ばそうとする
光と体温が仲良くなる
春は脱ぐものがないから
そのままの姿で笑っていて
僕に色を与えた人の声を
かすれた筆のようになぞっている
君は鏡を持っていて
美容師みたいに全身を映し
大抵のことが綺麗に見えた
雨が降っても変わらないくらい
この気持ちは濡れたフリをして
心の底で泡立つ生クリーム
今日が誕生日なら良かったのに
僕は歳を取るのが怖いけれど
君は平気そうに見えていたよ
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