甘いバターと春、或いは/みい
 


今日もひとりでいたわたしが死んでゆく
春になろうとしていることを目で捉え
そして触ろうとしたあなたの髪を
さらり、簡単すぎるほど軽くすり抜ける

ねえ、どうしてこんなにたったわたしのひとつの命が
こんなにも重たくてつらく鮮やかなのですか

あなたの指はいつも絡まったピアノを解くような
優しい温度をしていて
苦しみとか
痛みとか
なんでもなかったかのように笑うの

もう、よして

キスだとか抱擁の
リズムがあるものは全部壊してしまいたい

絶対に必要なのに要らないと思ったの
コップの中の指輪はきっと
サイダーに溺れて言葉も出ない
泡が
ただのぼる
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