安全地帯/ミナト 螢
 
夜に穴を掘るように走る
バイクの音が主役になるから
親密な青い空が震えた
テールランプと並んだ螢は
どっちも似たような光だけど
半袖と腕の隙間を作った
その部屋で遊ぶ短い命は
逃れながら振り撒きながら
これから先もずっと生きていく
俺たちはもう真夜中の途中で
魂が吸い込まれるのを待つだけ
それはタバコの煙かも知れずに
螢が水辺を抱え込んだまま
安全地帯を探すたびに
飛び続けて宿り続けて
緑の森で朝に溶けるだろう
鳴くはずのない声を聞きたくて
シートに座ってばかりいたのに
身長が少し伸びたフリしても
あの光にはまだ触れていない
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