撃たれる/岡部淳太郎
思えば、あの頃からいつかこうなるのではないかと、漠
然と予期していたのだった。あの頃、俺がまだ若くて、
日常の懊悩や苛立ちや、燃えやすい枯れ枝のような未熟
な考えを持て余していた頃から、いつかこんなふうに世
界は混乱して、空の上までいっぱいに、唾液のように吐
き出しては飲みこまれる思想で満たされて、人々が互い
に争う日々が訪れることを、感じていたのだった。あの
頃、それをいまはもう名前も忘れてしまった友人に語っ
たけれど、馬鹿だな、そんなことに、なるわけがないじ
ゃないか。そう笑われて終ってしまった。だが、いまや
人々は戦いのなかにあって、その淵で足並みを揃えて行
進している
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