考えない足/為平 澪
に被せ
定刻通りに来る運転手のバスに乗せられて
この町を周り続ける
バスは決まった方角へと進み
市役所と病院を通過して
同じ場所で私を降ろす
(便利になったもんだ
(バスの時間に間に合わない者は
(買い物も治療も手続き事もできないのだから
小さな押し車に頼る老人と
杖を突く老女が そう呟いて降車した
バスに揺られ 自分の足も動かさないまま
私は町を何周しながら死んでいくのだろう
【便利になったのだ】
ペダルを漕ぐ白い運動靴の足たちが
時間を逆走して
バスの中の私を追い越していく
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