日々を守る/服部 剛
 
令和二年二月二十一日
詩人・石垣りん生誕百年の日 

コロナウイルスは日本にも感染し 
連日テレビは「今日の感染者」を伝える
僕が子どもの頃はなかった病原菌が 
世に蔓延(はびこ)り始めたのは何故? と思いつつ
スマホを手に、小さな画面のニュースをみる

「うがい・手洗い・マスク着用
 アルコール消毒・イベント自粛」

は、確かに大事です 
予防に努めながらも
自分の中でもう一つの声がする 

?日々の味わいの褪せぬよう?

午後、温かい紅茶をカップに注ぎ
オレンジピールの入ったチョコを食べる
板チョコのうすい箱に
よじれたオレンジスライスの絵が 
仄(ほの)かな光を帯びている

夜、親しい詩人の友と
今日でないとわかち合えない
ささやかな食事をするために
マスクをして、出かける 

――あなたが旅立ち、十五年

病の蔓延る世の上に 
今日もひろがる 
空をかついで * 
ひっそり 明日を願う



  * 石垣りんの詩より引用  





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