迅奈良と幣 (じんなら と ぬさ)/AB(なかほど)
 

生駒さんの餅まきで
みっちゃんは手を伸ばしとったけど
その手に餅は届かず
白い紙切れだけが絡んできた


帰り道

こんなんいやや
とちぎろうとしたころ
竜田川の迅奈良が顔出して

そのひらひらで
おっちゃんをさすってくれんかなあ

 っていうてきた


なんで

 って聞いてみたら

たまにな
誰かにひらひらで背中のほうさすってもらわれへんと
棘の毒が弱なってまうねん
おっちゃんに毒ないってなったら
かっこつかんねん
な、嬢ちゃん


力いっぱい
迅奈良の背中をさすったみっちゃんは
そのお礼に

とっておきにするんや

 って言われて棘を一本もらった


そのみっちゃんもな
今年はとびきり別嬪な巫女さんや
せやけど
とっておきを自分に刺してもうたんやで
あないなかみ憑かりにヒラヒラ振ってからに


餅はまだかいな


  
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