浴室の鏡/秋葉竹
 


青いタイル張りの
浴室で
貼り付けた鏡は不可逆にまで曇り
あたしの顔が見えなくて
泣いているのか
笑いをこらえているのかも
わからない
灰色がたちこめる世界だ

湯をかけてやっても
ダメなものだから
あたしも一枚の
ブルーのタイルになる
二月二十二日

そこにはやはり
目に見える
十字架が突き刺さっていて

ほかの三つの二は実は
君とあたしと
夜の君
三人の照れた笑顔の『ニッ』なのだ

浴槽に湯を目一杯張って
頭を突っ込んでブクブク言ってやった
あとで短く口を突いてでる
言葉と思いやりの
欠片を
いまも知っている「好きです」





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