tensen/ミナト 螢
 
懐かしいと思う気持ちを
裁縫箱から取り出して来る
鼓膜の些細な震えに耐えた
心臓の歯車がミシンを回し
あなたと見ていた花火の模様が
糸で縫えたから会える気がした
それは複雑な足跡のように
行きと帰りの道が混ざってしまい
だからこそ私はこの世界で
縫い目を飛ばす遊びを作って
あなたに会えない理由を用意する
不発に終わった花火みたいに
触れて擦り抜けて傷ついた
この指に何も飾らなくなっても
引け目に感じる歳までは生きる
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