稲妻石/Seia
 
足場は細く
どこまでも長い
尾根を歩いていた
草木は低く
岩肌はもろい
周囲を見渡そうと踏み出した
足を滑らせ
落ちる
底のない
服は破れ
皮膚は削れる
すこし宙に浮く
落ちる
底のない
服は破れ
繰り返して
皮膚は削れ
繰り返して
わたしは
やがて球体になった

麓の村のはずれに落ちたとき
雷のような音がしたことから
そのまま稲妻石と呼ばれ
囲むかたちで神社が建てられた

しめ縄が巻かれ
酒をかけられ
数百年ほど拝まれただろうか
その日の曇り空は色が濃くなる一方で
夕方にかけ風は強まり
参拝者の髪も揺れていた

突然願い事が聞こえ
[次のページ]
戻る   Point(2)